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サクラのエリコ 第二話「サクラのバイト」 

新宿のとあるビルにカスミのバイト先はあった。


とても出会い系サイトの運営会社が入ってるとは思えない大きくて綺麗なビルだ。


「怪しい雑居ビルだと思ってたよ」


「あはは。意外と儲かってるらしいよ」


エレベーターに乗って12階まで昇る。エレベーターが開くと、壁に据え付けられたプラスチックの案内板が無言で迎えてくれた。


ワンフロアに複数の会社が入っているため、その内容には賑やかだ。
カスミに連れられて廊下を進む。


一番奥のドアにつくと、カスミがセキュリティカードを探すためカバンをまさぐる。
ドアには長方形のプレートが貼られており、そこには

「シムラネットゲート」


と刻まれていた。
カスミがようやくカードをドアの横に備え付けの機械に通す。


ピピッ、カチッ。


扉が開いたとたん、波のようにパソコンのキーボードを叩く音が押し寄せて来た。


カチカチカチ、カタカタ、カタタン

途切れる事なくキーボードを叩く音が響く。それに混じりスタッフの会話が早口で交わされている。


「ヨシカズ、5000入りました!」


「よし、一気にサクレ!今日中に最低あと一回は回させろ」


「ハルヒコ、チエに浮気してやがるぜ」


「じゃあチエとカズミで同時に揺さぶりかけちゃいなよ」


エリコにはまだこの会話の意味がさっぱりわからなかった。
カスミは理解しているようで、それを聞きながらあははと笑った。

後ほどカスミに訳してもらった内容はこうだ。


==================
「ヨシカズ、5000入りました!」

→ヨシカズという男性会員が、5000円でポイントを購入した。
(出会い系サイトは女性にメールするのにポイントを消費するらしい)



「よし、一気にサクレ!今日中に最低あと一回は回させろ」

→よし、メールのやり取りをして一気にポイントを消費させろ。今日中にもう一度ポイントを購入させろ。


「ハルヒコ、チエに浮気してやがるぜ」

→男性会員の中には色んな女性にメールを送っている人がいる。



「じゃあチエとカズミで同時に揺さぶりかけちゃいなよ」

→そういう男性会員は女性をゲットしようと必死なので同時に複数の女性から
メールが来ると舞い上がる。

===================


ああ、なんかキャバクラの裏側と同じだ、とエリコは直感で感じた。


このフロアにはパソコンがおよそ40台ほど。ほぼ全てのパソコンにスタッフが張り付いている。しかも9割が男だ。

これが出会い系サイトのサクラなのだろうか?
という事は男性会員のほとんどが男性の演じる女性にラブメールを送っている事になるのではないか?


「うわああキモッ」


カスミの紹介でなければ、口に出してその場で言ってしまいそうだった。


「お、カスミちゃんオハヨー」


「おはようございまーす」

サクラのリーダーっぽい男がカスミに声をかけると、その場にいたスタッフが次々と挨拶を口にした。
意外と皆明るいようで、エリコの持っていたイメージとは随分違った。




ところで先ほどから男性スタッフの視線が痛い。みんな見てないようでチラチラとこちらを見ているのがわかる。


エリコの容姿は自然と男を惹き付けるものがある。カスミもかなりの美人なため、二人が並ぶとその場所だけ別空間に感じられる。

童顔で甘い顔のエリコと、鼻筋の通ったクールな美人タイプのカスミ。

対照的な印象を持った二人なのだが、それがまたお互いの魅力を倍増させている。



「おはようございまぁす(はーと)」


反射的にエリコは営業用ボイスで言った。
大きすぎず、小さすぎず、甘えた感じで、トーンはエッチの時に出す声に近い。

もちろん語尾にハートを付ける気分で。

これがエリコの先制攻撃用武器だった。



客はもちろん、職場のスタッフを懐柔する事も重要だとエリコは思っている。


二流のキャバ嬢はスタッフへの接し方がヘタだ。たかがボーイだから、とかたかが呼び込みだから、とか、客さえ掴めばOKだと思い込んでいいる女が多い。

しかしそれでは自分の力の限界が来た時に乗り越えられない。

いつどこで彼らの助けが大きなポイントになるか。

エリコはそこまで自然と計算できる能力が身についていた。

エリコがNo1キャバ嬢であったのは顔のかわいさだけではないのだ。


「おはよーございまーーーす」


ほぼ全員の男性スタッフが声を揃えた。


手ごたえあり。


まだ面接にすら受かっていないのだが。



「へぇー16歳でキャバクラのNo1にねぇ」


カスミから「シムラ社長」と紹介された男は、履歴書とエリコを交互に見ながら言った。


「で、未成年なのがバレて首になったと」


「えへへ」


少々正直に話過ぎたかな、とエリコは思った。
しかしカスミが、そこがエリコのセールスポイントだから必ず言えと勧めたのだ。


「はぁ、クリステンか。知ってる知ってる、結構有名店だよな。あそこでNo1にねぇ…」


社長は見た感じ、まだ40歳は行ってないだろう。陽に焼けた顔に茶髪といかにも胡散臭い。




「入店してどれくらいでNo1になったの?」


確かにこの話題は珍しかろうが、面接なのに一切仕事の話しがないのはいかがなもんだろうか。


「3ヶ月くらいですかね~」


「すげぇなオイ、それから一年近くずっと?」


「はい」


「パソコンは触れる?」


「はい、ブラインドタッチOKです」


たわいもない会話の中に、突然大事な話を挟む。よくある営業マンの話し方の一つで、相手の思考に隙を与えない方法だ。
エリコは勿論それに対処できる


「よし君採用」


「は?」


「カスミちゃんに聞いて、これる日からシフト組みな。二、三日研修扱いになるけどやってみて」


「は、はい」


こんないい加減な面接でいいのか。
胡散臭い業種にはやはりいい加減な採用基準しかないと言うことであろうか…



しかしエリコは直感で自分ならやっていけるかもしれないと感じた。

「ごめんエリコ。今日人手足りなくてさ、新人研修してる余裕ないの」


「あらそうなの?じゃあ今日はワタシこれで帰っていいのかな?」


「うん、終わったらシフト合わせで電話するから」


「おっけえ、できたら初日はチョッパと同じ日がいいなあ」


「もちろんよ、うまく調整してもらうから」


「ありがと~ん」


と言う訳で、ものの15分程で面接・採用が決定し帰路につくエリコ。


このまま新宿をブラブラしたいところだが…昨日の今日だ、もうしばらく大人しく隠れていることにした。



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