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サクラのエリコ 第三話「新宿で」 

やりかけのゲームや読みかけの雑誌を家に置いたままなのが気にかかるが仕方がない。
しかし当面の下着の着替えだけでも買おうとユニクロに寄る事にした。


仮面ライダーの目くらいデカイサングラスで顔の半分を隠し、服の趣味はカスミからの借り物なので普段のエリコの雰囲気は充分に隠せているはずだった。


「エリコ!」


ぎくっ

呼び止める女の声。
人間ピンチの時は一瞬で色々考える。聞えないふりをして歩き去るか、声の主をとりあえず確認するか。

幸いサングラスで目の動きは悟られる事はない。チラリと横目で声のした方向を見た。


真っ先に目に入ってきたのは、真っ黒な黒髪だった。女のエリコでも一瞬見とれてしまいそうな艶やかな髪。
若い女がこっちを見て微笑んでいた。
真っ白な肌がさらに髪の黒さを印象づけている。


「真奈美さん!」


「結構久しぶりじゃない」


真奈美を見るとエリコはいつもマネキンを思い出す。彼女はそれくらい完璧に整った容姿の女性だった。


これで芸能人でなく夜の新宿の女だというのだから世の中わからない。



「聞いたわ、やっちゃったらしいわね」


メインストリートから少し離れた喫茶店に入ったエリコと真奈美。
売れっ子の風俗嬢である彼女は、目立つ場所にいると客やらスカウトやらに声をかけられまくる。
だから真奈美は職業柄人の目から外れた店をよく知っていたし、エリコも彼女から幾つか教えられた事もある。

エリコと真奈美はひょんな事から知り合ったのだが、何かと縁があり今に至る。
真奈美は唯一エリコの気持ちがわかる人物だった。

彼女も未成年の頃から新宿に根を張っていたのである。


「とうとうバレましたか」


真奈美はタバコに火をつけながら言った。


「ごめんね、年ごまかしてるの黙ってて」


「いいわよ、知ってたから」


「私が16って知ってたの?」


「うん、まだ高校生くらいだろうな~って思ってたよ」


「ええ~!?いつから??」


「初めて会った時から。だからあんたに好感が持てたのよ」


「どうして?」


「私と同じだから」


そういって真奈美はアハハと笑った。上品な顔立ちがたちまち無邪気な少女の顔になる。


「そっか、真奈美さんはよくバレなかったよね」


「運がよかったのかしらね。おかげでどっぷりこの世界から抜けれなくなったけど」


「私がクビになったの誰に聞いたの?」


「仕事行くときにクリステンの前通ったら救急車来ててさ、何事かなって聞いたの」


「うはあ」


「智花、鼻折れたってさ」


「うはあぁ」


別段罪悪感もなにもないが、一応申し訳なさそうな顔だけはした。顔の広い真奈美は智花とも知り合いだし、マネージャーとも仲がいい。


「まぁ、あなたの話を聞く限りじゃ自業自得ね。彼女にはそうでもしなければあなたを追い越せる自信がなかったんでしょ」


「いや~」


真奈美に肯定されると心強いというかなんだか照れる。エリコはどこか彼女の事を尊敬しているのかもしれない。


「でも」


真奈美はタバコをもみ消すと、身を乗り出しエリコの頬をつまんだ。



「ふに?」


「顔を殴ったのはいただけないわね。夜の女は顔が命なのはあなたが一番よくわかってるでしょ?」


静かな言い方だが強い感情が込められている。


「ふぁああいごめんなさああい」


「いい?未成年、ってバカにされたり差別されるのが嫌ならガキっぽい事するんじゃないわよ。大人のルールを護れるようになってから偉そうな事やんなさい」


そういい終わると最後にキュッと頬をつねった。


「はい…ごめんなさい」


頬がジンジンする。しかし真奈美の言う事はエリコにとって心底響くものだった。


「ま、わざわざ誤りに行く事はないと思うけど。未成年かどうか調べずに雇ってたマネージャーも責任があるし、智花に関しては自業自得だし」


再びタバコをくわえると火をつけ、一息吸い込んでから


「ただ…」



「ただ?」


「智花の仕返しだけは注意しなさい。あの子根本的に性格が歪んでるから。自分が悪いなんてこれっぽっちも思ってないでしょうよ」


「そうですねえ・・・」


「腐ってもNo2だったんだからね。こっち系の客に知り合いだってあるだろうし」


そう言って人差し指で頬に傷を付ける仕草をして見せた。


「しばらく大人しくしてる」


「エリコだってその気になれば向かい撃てる人脈くらいあるだろうけど…お互いが第三者立てたら大事になるでしょ?」


「うん」


「まあ何かあったら連絡してきなさい」


「ありがと、真奈美さん」


エリコはあまり母親の事を覚えていないが、もしいたら真奈美のような女性だったらよかったのにな、と思った。五歳くらいしか年が離れていないはずなのだが、彼女にはそれくらいの抱擁感というか懐の深さを感じた。



「ところでこれからどうするの?」


「一応バイトは決まったよ。カスミに紹介してもらったの」


「カスミって・・・ああ、あのモデルみたいな子?」


「うん」


「なにするの?」


「出会い系サイトのサクラ」


「はぁ?あっはっはなにそれ!」


真奈美は素で笑った。


「笑えるでしょ?マジ話だよ。面接15分くらいで採用だって」


「うける!サクラって何するの?メールで男の相手するんでしょ?」


「そうそう、まだシフト決まってないからよくわかんないけどそんな感じ」


「ほんとあんた面白いわね。仕事始まったらまた詳しく聞かせてよ」


「OK♪」


それからしばらくたわいもない話をした後、真奈美の出勤時間になったので店を出た。

随分早く街に出てきていたと言う事は、他に用事があったのだろう。それを潰してまでエリコを心配して声をかけてくれたのかもしれない。
真奈美の背中を見送りながら、エリコは彼女の姉御的な優しさに感謝した。



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