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サクラのエリコ 第四話「才能じゃね?」 

エリコのサクラ生活が始まった。


エリコは中卒でしかも、ろくに学校に行ってはいない。

しかし先天的に要領がいいというか、頭がいい。

キャバクラでNo1になるために彼女は密かに勉強をした。

社会人相手に会話を合わせる為と、バカな女と思われないためだ。


事実彼女の営業トークから彼女を16歳と見破った奴はいない。いたとしても真奈美くらいだろう。




エリコは最初の30分程の講習で出会い系サイトのシステムを理解した。

まず男性会員は、メールを送るにも女性からのメールを見るにもそれぞれ10ポイント(100円分)必要となる。

通常の一回のやり取りで最低20ポイント(200円)の金額が生じるわけだ。

そこでサクラの腕の見せ所である。何通も何通もやり取りをする事で、男性客はどんどんポイントを消費する。
無くなったらメールのやりとりができなくなる訳だが、そこで

「もっと続けたい」

と思わせられれば、男性客はポイントを購入する。

これの繰り返しだ。




ベテランのサクラで、一日の勤務時間内でおよそ10000ポイント以上は客に消費させる者もいる。

そんな輩が一日に6人程と、プラス他のバイトが数人。24時間体制でおよそ6~70000ポイント。

それほど規模の大きくないこの会社のサイトでも一日の売り上げが70万近い。

一ヶ月で換算すれば・・・どれだけの利益を上げる商売なのか理解できるだろうか。

エリコの働いていたキャバクラほどの売り上げではないにせよ、それに近い商売であることがわかる。


逆に考えれば、このようなポイント系のサイトでサクラがいない方が不思議としか言いようが無い。




「まずはそうね…魅力的なキャラ作ってみてよ」


エリコの教育担当はもちろんカスミになった。


「キャラ」とはサクラをする時に使う架空の女性会員。
プロフィールから何からすべてデタラメ。
画像はネット上で拾った女性の写真を無断で使う事すらある。それはもちろん違法だが、写真付きのプロフィールの効果は絶大なのだ。

OL、看護婦、女子大生、フリーター…様々な職業のキャラを作るが、ここで気を付けなければいけない事がある。


まずあまりにも現実離れしすぎたキャラは作らない。あくまで親近感というか、男性に取ってすぐに会ってくれそうな女性を演じるのがポイントだ。


あとは専門知識が必要な職業。男性会員との会話で突っ込まれた時受け答えができなければサクラだとばれてしまう。
自分の首を締めないためにも、扱いが楽な設定が一番だ。

男性会員も「サクラがいるんじゃないか」と疑っている者も少なくないので最新の注意を払わねばならない。



「できたよ~」


プロフィール入力画面からサクサクっとデータを入力するエリコ。
つい最近までネットゲームにはまっていたのでタイピングの速さはばっちりだ。


「はやいね~、ちょっとまってて」


カスミも通常のサクラ業務をしながらの講習である。
一度に複数の男性とメールのやり取りをするのだから集中力もそこそこ必要であった。


「おうおう、硬いとこ作るわね。看護婦とか美容師とか…さすがツボを
得てるじゃん」


「ようするに男はコスプレ系に弱いんですよ」


「さすが。そっちに関しては熟練ですわね」



普段の生活とは別の世界にいるイメージのある職業。身近だが触れ合う機会は少ない。
そういう女性の制服に男は潜在的に惹かれるのであろうか?

要するに現実逃避がしたいというか、異性に妄想や非現実感を求めるのは男も女も関係ない。


ただ男の場合、女性に比べて恥じらいが薄い分露骨に反応するんじゃないだろうか?




自分で作ったイメージというものは他人から傷付けられにくい。


人間は自分で作ったイメージを信頼してしまう傾向があるからだ。


それはすなわち他人から利用されやすい。


TVなんかがいい例だ。

TV側が素材を提供し、ファンがイメージを脳内で固める。
あとは素材を提供し続ければファンは勝手に夢中になってくれる。


キャラを「演じる」ことによって素材を提供し続けるのはエリコの経験上簡単な事だし、それを利用するのは得意中の得意であった。



無意識のうちに罠を張る。



そういう世界で培われた才能は、日の光を浴びても枯れる事はない。



「あれ?」


エリコの作ったキャラをチェックしていたカスミが、ふとマウスを動かす手を止めた。


「ん?どうしたの?」


「ちょっとエリコ、なんでこれだけ実名出してんの?」


カスミがモニターに指差したところにはエリコが作ったキャラのプロフィールが書かれている。

そのうちの一つに


====================
名前:エリコ
年齢:20
身長152cm
3サイズ B88W59H85
メッセージ
元キャバ嬢です。仕事辞めて暇してまーす。お客さん相手疲れちゃった、ほんとの私を見てくれる人募集しま~す。フィーリングが合えば会った日にエッチ、なんてのもありかな(^^)v
====================



「しかも身長以外の数字デタラメだし(笑)」



ケタケタと笑うカスミ。



「りありてぃを追及したんですよ!」



エリコは照れ隠しにカスミの肩をバシッと叩きながら言った。
エリコが本気さと恥ずかしさをごまかす時にやるクセだ。


カスミはそのクセをよく知っている。
だから彼女が間違って書いたものではないとわかっていたがネタとして笑わずにはいられなかった。


「知らないよ、キャバの時の客にバレても?」


そう注意しながらもニヤニヤした顔をするカスミ。


「そん時はその客も今度はこっちでお金出してもらえばいーじゃん♪」


「たくましい(笑)」


「できたらマジでキャバの客も引っ張りたいくらいよ。せっかく指名客かかえてたの無駄になったしさ」


思い出すとまたムカついてくる。一年かけて必死で掴んだ客を全て無駄にした。
頭の中にバカ笑いする智花の顔がちらつきさらにムカついた。
しかし彼女が顔面に鼻骨骨折用のギプスを付け、バットマン見たいな顔をしているのを想像すると笑えた。



「で、あとはどうするの?」


「色々やることはあるわよ。今作ったプロフィールに男性会員からアプローチがくるのを待ちつつ…」


「待つだけじゃないの?」


「男を振り向かせる基本姿勢は?」


「攻撃体勢!」


「正解!今登録してる男性会員にこっちからお誘いメールだすのよ」


「え~それって嘘くせ~。普通女からお誘いのメールなんてくるわけないじゃん」


「相手はヤリたくてヤリたくて仕方ない奴らよ?多少の非常識対して気にしないわよ」


「マジで~」


それでは、とカスミが選んでくれた男性会員に手当たり次第メールをだしてみるエリコ。

確かにまあ、これにひっかかるような奴らなら後々やりやすいっちゃあやりやすい。


冷静に考えたらキャバ嬢やってた時もこんなものだったかもしれない。


ただ、相手は酒が入ってる事が多かったが…。



後はリアクション待ちなので、休憩をすることに。


馴れない職場での休憩は気が休まらないが、取り敢えず、飲み物でも買おうかとベンダーのある談話室に向かった。


談話室は一応の間仕切りと観葉植物で仕事場からは見えないようになっている。
そこから他のサクラのバイト達の会話が漏れていた。


「あの新しい女、元キャバ嬢だってよ」


「マジ?結構かわいかったじゃん」


「頼んだらやらせてくれんじゃねーの?」


「なんか元キャバでNo1だったからって社長が採用したらしいぜ」


「キャバ嬢って馬鹿ばっかじゃん。たいしたポイント稼げるわけねーよ」


あからさまな会話が垂れ流されている。
いきなりその場に出ていったらどんな顔をするだろうか。

エリコは気が短いほうだが、冷静に倍返しをする方だ。

ここで奴らの気まずそうな顔をみるより、自分よりエリコの方が上だと見上げさせるほうが何倍も気分がいい。


エリコは飲み物を買わずにカスミのデスクに引き返した。



「はやっ。ってかエリコ、よく戻ってきた!」


カスミが嬉しそうに手招きする。


「どったん?」


「ほら、これ見てみなよ」


エリコ:50件受信


「うぉー」


その他に作ったキャラにも十数件の受信がある。全て男性会員からのアプローチなりリアクションなりだ。

さっきの談話室でエリコの悪口を言っていた連中が、何事もなかったように戻ってきた。


「ねぇねぇチョッパ、今戻ってきた奴らの一日に稼ぐポイントってどんくらい?」


「うーん、5、6000ポイントってとこじゃない?」


「オッケー」


「どしたの?」


カスミは薄々何があったか気がついた。
普段他人に興味のないエリコが、競争心を燃やすのはムカついている時だからだ。



それから数時間。

エリコは一心不乱にメールのやりとりを続けた。

見た目のチャラさからは想像もつかない程の集中力に、周りの誰もが声をかけるのを躊躇った。


キャバに入りたての頃、開店前に送りまくった営業メールを思い出す。


彼女のメールの内容には「騙してやろう」「引っ掛けてやろう」という邪悪な感情は微塵も感じられない。
実際彼女がそういう気持ちをこめていたかどうかはわからないが、感じさせないのは彼女の技術のなせる技なのではないだろうか?

読んだ者には「返事が欲しい」というしおらしい感情が伝わる。

この営業メールに何人の客が何度足を運んだだろうか。



午後6時。


早番のバイトと遅番のバイトが入れ替わる時間である。
昼のバイトが作ったキャラや、メールのやりとりをしている客などを夜勤のものが引き継ぐ。
引き継ぐ者は履歴をしっかりと読み、語調や話の展開を忠実に続けなければいけない。
男性会員からすれば、ずっと同じ女性とやり取りしていたつもりが、実は複数のサクラとやり取りしていた事など普通にある事なのだ。
そうでもしなければ、夜になればまったく女性から返事がない、なんて怪しすぎるからだ。それだけサクラはリアリティを大事にする。




早番のバイトが自分の獲得ポイントのチェックをする。
大概が管理用のツールでそれぞれの成績を見れるようになっている。
これをリーダーが記録して、バイト達の時給アップの査定に使う。

この日のエリコの獲得ポイントは…


7845


ベテランクラスのカスミの獲得ポイントが11656だった事から、初日のこの数字が驚異的なのは明らかだった。

エリコを馬鹿にしていた奴らは言葉も発せず唖然としている。


「うぉおすっげ!エリコちゃんいきなり今日三位かよ!!」


様子を見に来た志村社長が感嘆の声を上げた。


「おいおい、初日の16歳に大差つけられてどーすんだおまえら?」


エリコを馬鹿にしていた奴らの平均は6000に満たない。


「私みたいな馬鹿なキャバ嬢でもできるんですねー(はーと)」


エリコはわざとらしく聞こえる言い方で言った。


「お疲れさまです…」


すごすごと帰り始めるバイト達。


エリコの完全勝利だ。



「見た?あいつらの顔」


そういってエリコはアヒャヒャと笑った。精神的ダメージで仕返しをできた事にご満悦だ。


「あんたやっぱすごいよ。初日で7000ポイントって…新人の過去最高かも」


「オホホホホ」


おどけながらエリコはふと、何かを思い出した。


「あ、そうだ。そう言えばなんかへんな客がいたんだよね~」


「出会い系の客なんて変なやつばっかりよ」


「いや、まあそうなんだけど…」


確かに。それは一日でよくわかった。
出会い系サイトの利用が長ければ長いほどおかしな客は多い。
いきなり一通目のメールに挨拶もなく合う場所を書いてくる者もいれば、真夜中に今からすぐ出てこいと言う客もいる。
一般の女性にこんなメールを送ったら、頭がおかしいとしか思われない。
頭からサクラと疑ってるのか、何度もサクラに騙されてるせいで感覚が麻痺しているのであろうか。

と言ってもまだまだエリコの想像を絶するおかしな奴がたくさんいるが。


「なんか気になる奴がいたの?」


「うん、これなんだけど…」

そう言ってエリコは問題の受信メールをカスミに見せた。

==================
ケンジ 99歳
東京都

メッセージ
こんにちはエリコさん。
僕は東京都在住の男です。
いきなりで失礼なんですが、エリコさんはサクラさんなんですか?
もしそうでも構いません。女性と直接合うのが目的ではないので、お話の相手になって頂けるだけでかまいません。
お返事をお待ちしています。
==================


「うーん」


そのメールを見てカスミは唸った。
その後数回のエリコの受け答えもチェックする。


「どう?」


「うん、変だ(笑)」


「そのまんまかよ(笑)」


「他社サイトの探りか、もしくは散々サクラに騙されたやつか」


「騙されたやつ?」


「いるのよ、逆恨みしてサクラを逆に引っ掛けようとするバカ。こっちには登録時の情報があるからすぐにバレるんだけどね」


逆恨みとはまた、騙してるから恨まれるのは当然なのだが。
しかし実際にこんな客はたまにいる。



「まあ、なかなか上手い返事の仕方してるね」


疑ったりからかおうとする相手への対処法は無視かとぼけ倒す事だ。
前者は仕事にならないので、この場合後者が無難だろう。

エリコはもちろんとぼけまくるどころか、逆に相手に質問するようになる形でメールのやり取りをしていた。
これは一番上手いやり方だった。


男は大概語り手になりたがる。だから質問・聞き手にまわれば自然と会話は長引く。
エリコはキャバで身につけた技術を完璧に応用できていた。



「業者にしろただの変態にしろ様子みましょ。金払ってくれれば問題ないし」


まぁ確かにそうだ、と今日はおつかれモードに頭を切り替えたエリコ。


「お疲れさまでーす」


カスミと共に会社を後にした。

仕事モードとプライベートモードを完璧に切り替えられるのは仕事に疲れないコツだ。




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