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サクラのエリコ 第七話「ケンジ」 

「おはよーございます」


結花事件から一日明けた。さすがに翌日は休みをとったエリコとカスミは、充分
な睡眠と食事であの騒動をすっかり忘れた。


おはよー


「おはようございやす!!」

いつもの緩いものにまじり、気合いの入った挨拶が飛んできた。


「は?」


声の主を見てキョトンとするカスミ。


「今日からお世話になりやす、船越慶一郎でございやすっ」


挨拶というよりは威嚇に近い姿勢の慶一郎がそこにいた。


「なんでバカがここにいるんよ」

エリコは冷静な口調で言った。


「バカって言うんぢゃねぇよ!」


「ここはバカがくるところじゃないのよ!」


「うるせぇ!俺だって何が悲しくてこんなところ…」

「カスミちゃん、エリコちゃん、ちょっといいかい?」


慶一郎が泣きそうな顔になったところで、志村社長が声をかけてきた。


「あ、はーい」


エリコ達が行ってしまい、慶一郎は振り挙げた拳のやり場をなくし舌打ちした。

「何みてんだオマエラ」


仕方なくバイト達に当たる。
明らかに一般人ではなさそうな新人に、先輩アルバイト達は不安を募らせた。


「えーと、うん、まあその」


相変わらず色が黒い志村社長は、言葉を慎重に選ぶふりをした。


「単刀直入に聞くけど…君たち鮫島さんとどういう関係?」


「あれー、社長鮫島のパパと知り合いなんですかぁ?」


「パ、パパ?!」


「いい人だよねーあのオジサン」


「だよねー」


志村社長は、エリコとカスミの会話に複雑な顔をした。


「いったいどういう関係なんだ?」


「私のキャバの時のお客さんなんですよー」


「なるほど…そういうことか」


「社長鮫島のパパとお知り合いなんですか?」


「知り合いというか知らない人はいないというか…こういう商売してるとね」


「で、鮫島のパパがどうしたんですか?」


「いや、いきなり昨日電話かかってきてさ。うちの若いの預かってくれって…」


「慶一郎を?」


「ああ。なんでも君たちのボディーガードだとさ」

「ボディーガードぉ!?」


「ちょっと待ってください、エリコだけならともかく君たちの、って私も含まれ
てるんですか?」


「ああ、カスミちゃんとエリコちゃんの、ってさ」


「なんで私まで」


「とにかく普段はうちのバイトとして使っていいそうだからさ、あの金髪坊主。
君たちに任せていい?」


「えー嫌ですよ、あいつ物覚え悪そうだし」


「内緒で時給あげるからさ、な!」


「まぁ、それなら」


「ありがと!助かるよ」



オフィスに戻ると慶一郎がカスミの席にドカッと座っていた。
誰も彼と目を合わせようとせず、孤立する様は滑稽にも見える。


「どこ座ってんのよ、どけ」

「すいません、カスミ姉さん!」


「ね、姉さん!?」


どよどよどよ、と他のバイトが声にならないどよめきを始める。
まるで獣と調教師を見るような目で二人を交互に見る。


「誰が姉さんよ!」


カスミは、その獣をなんとかしてくれと言わんばかりの皆の視線にイラッとした。


「いや、姉さんと呼ばせてください!あんたみたいな強くて根性のある女性(ひと)は見たことがねえ!」


「な、何わけのわからない事言ってんのよ!」


カスミは一応ここでは普通の女の子で通している。へたなイメージを付けられたらたまったもんじゃない。


「何言ってんすか、なんでも鮫島のオジキにヤクザ!って怒鳴ったそうじゃないですかっ。オジキも関心してましたよ、あの子は将来いい極妻になるって」


ざわざわざわざわ。


バイト達はどよめきをざわめきに変え、魔王を見る村人のように怯えた顔でカスミに視線を集中させた。


「ちょっとエリコ~このバカになんとか言ってよ~」


耐えられなくなったカスミはエリコに助けを求めた。


「ケンジ壱万円ご入金でぇ~す♪」


「野郎裏切ったな…」


エリコは関わりたくありません、といった顔ですでにたまったメールを返信し、客に入金させ始めていた。


「姉さんが俺の指導員っすか?」


「指導員って少年院じゃないんだから…」


「大丈夫、ネンショー(少年院)で指導員にしごかれるのは馴れてます!」


「しばらくだまってて…」


エリコは勤務二日目にもかかわらず、手際よくたまっていたメールに返信していった。

さすがに社会人の客が多いせいか、平日の朝から返信してくる者はそうはいない。

しかし唯一、数分で返信してきた者がいた。

あの奇妙な客「ケンジ」だった。

「おはよう、サクラのエリコさん。昨日はお休みだったのかな?返事がないから退屈してました」

完全にエリコをサクラだと思っている言いよう。
少しカチンときたが、ここは下手に出て返事したほうがいい。これが相手の挑発だとしたら、まんまとそれに乗るなんて愚作でしかない。


「だから~私サクラじゃないってば(汗)昨日は携帯忘れて返事できなかったの~(*_*)」


「気を悪くしたのならごめんね。僕にとっては君がサクラでも本物のキャバクラ嬢でもいいんだ。ただ暇つぶしの相手してくれたら」

おかしな事を言うやつだ。他の男性客はただヤルことしか頭にないのに話相手になって欲しいなんて、逆に純情すぎて不気味だ。


「変な人ねー他にメールくれる男の人はみんなヤリたいヤリたいって感じでギラギラしてるのに(笑)」


「一時の欲求より長い暇つぶしの方が魅力的だな。この歳になると肉体関係より君みたいな未知の年代と会話をしているほうが楽しい」


「この歳ってケンジさんってばホントはいくつなのさ?いい加減教えてくれてもいいじゃない(^_-)」


「内緒」


「ひどーい、返事そっけなすぎー(笑)」


「あはは。相手がミステリアスな方が楽しいじゃないか。おっとポイントが無くなりそうだ、購入してくるから待ってて」


そう言ってからとケンジのメールが途絶えた。


銀行に振り込みでも行ったのだろうか?

数分後、ケンジが入金したという通知が入った。


「ケンジ1万円ご入金で~す」


お決まりの台詞を言う。
これを合図にポイント追加担当が入金した男性客に入金分のポイントを加算する。


「了解~…あれ?」


担当の者がモニターを見て首を傾げた。


「どうしたんですか?」


「いや、いち、じゅう、ひゃく、せん、まん…じゅうまん?!」


「へ!?」


「え、エリコちゃん、ケンジ10万入金してるよ!!」

バイト全員がどよめいた。
過去に一回の入金が10万を超えた客はいない。
せいぜい高額入金者でも1万か2万がいいところだ。

「間違えて入れたのかな…」


「カード決済だからね、ありえるかも」


ケンジから再びメールがきた。
なんとなく恐る恐る開くエリコ。
出会い系サイトでいきなり10万も払う奴なんて気味が悪い。
特にケンジのように目的がはっきりしない奴はなおさらだ。





「いっぱいポイント買ったよ。これで暫くは気兼ねなくメールできるね」


「そんなに買ったの?幾ら使ったの?」
「10万くらいだよ。これって客に金を払わせたらエリコちゃんにマージンはあるの?」


ケンジは恐らく結構な年配かもしれない。
こちらが「サクラじゃない」と否定しても、構わず無視して同じ質問を繰り返す。
オッサンにありがちな特性である。


「だからサクラじゃないってば!だけど10万はやりすぎじゃない?」


それとなく探りを入れるエリコ。間違いではないのか、と聞きたいところだが、
女性会員と言う設定の彼女が金額を知ってるのもおかしい。


「お金は使い切れないくらいあるよ。出会い系サイトにしか使い道がないのが悲
しいところだけどね」


「なんでそんなお金持ちなの?そろそろ何をしてる人か教えてほしいなー」


「うーん、詳しくは言えないけど…まぁ自営業かな」


それでいつも真っ昼間にメールができるのか。
しかし金を持っているなんて話もうさんくさい。大抵が見栄を張っているだけな
事が多い。

「あやしぃー(笑)自営業でお金持ちって悪い事してるのしか想像できないんです
けど(笑)」


「はっはっは、人に迷惑かけたり法に触れる商売じゃないよ」


「ほんとにぃー?でもいつか教えてよね!」



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