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Red Cry ・第七十四話:「ヒキコさんとノロイ」  

Red_Cry第一話からはこちら↓
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特に急ぐことはない。
時間は無限にあるのだから、僕は徒歩を交えて東京に向かう事にした。
もちろん途中で乗り物には乗るつもりだが、極力歩く。

そういえば僕は生前もあまり遠くへ行ったことがなかった気がする。
だから見聞を広める意味も兼ね、この旅は意味のあるものになりそうだ。


しかしまあ、死んでいるのにこんな前向きな考えもどうだかとは思うけど。


アカネさんと別れてからヤタと二人っきりになった訳だが、以前にもましてお喋りになった気がする。
うるさくて仕方ないが、彼に助けられたのは事実、少しくらいは我慢することにしよう。



「ところでカァ月歩よ」


「なんだ?」


「オマエ、ナジャ太子殿から何かもらってなかったか?」


「ああ、貰ったって言うか貸してもらったんだよ」


そう言ってナジャ太子から預かったブレスレットをヤタに見せた。
ブレスレットというよりは腕輪に近い金属でできた太いわっかだ。見た目とは裏腹に結構な重さで、年季も入っている。銀色に鈍く光っているが銀でも、鉄でもなさそうだ。


「ほほう、かなりの値打ち物のようだぞ」


「おまえアクセサリの値打ちなんてわかるのかよ」


「バァカァにするな、カラスは光ものが大好きなんだぞ」


「光ってればなんでもいいんだろカラスって」


「貴様、崇高な生き物カラスを馬鹿にするんじゃない!いいか、カラスというのは・・・クドクド」



こんな感じでくだらない会話をしながら阪急電車に乗り、高槻市で下車。
梅田までは歩いてどれくらいかかるだう?
まあ飽きたらまた電車にのればいい、と線路沿いを歩いた。


線路沿いを歩いているとたまに高架下などの人気のない場所に差し掛かる。
高槻駅で降りてから何度かそういう場所があったが、別段気にする事もなく通り過ぎていた。
だっていくら死者になったからって僕に霊感なんてないんだもの。

だけど今回はちょっと嫌な気配を感じ取っていた。
一際暗く、ジメジメした高架に差し掛かるとそれはさらに強く感じられ鳥肌が立った。


「なんかやな感じだな」


「鳥肌がたったカァ」


「おまえ鳥だろう」


「カァ?見ろ月歩、誰か倒れているぞ」


「え、どこ?」


「高架の下、影になっている所だ」


傍に寄ってみると、確かにそこに人が倒れていた。
どういう風に区別したらいいかわからないが、それは生者ではない。死者だった。

全身ボロボロの衣服をまとい、もう何週間も洗濯していないような汚れた体。
あんまり関わりたくない風体の男は、白く細長い包みと、刀剣を入れるような唐草色の長包みを持っていた。
二つの袋は男の薄汚れた体には不釣合いなほど上等なもののようだ。


「どうする?なんか危険な香りがするなあ」


「カァっかわりたくないなぁ」


「うぅ」


どうしようか迷ってる間に男が意識を取り戻した。ああ、もう関わりにならないタイミングを逃してしまったようだ。


「おじさん、大丈夫?」


死者でも汚れるんだな、となんとなくくだらない感想を抱きながら男の肩を叩く。
すると男は驚いたような顔で僕の顔を見た。


「あんた死者・・・かい?」


僕を見た男の顔は深い皺の刻まれた老人だった。労働者風の日に焼けた肌が血の気を失い、土色になっている。

「ああ、うんそうだけどどうかしたの?」


「たのむ、これを持って・・・」


男は苦しそうに身を起こし、大事そうに抱えていた包みを僕に差し出した。
正面をこちらに向けた男の胸元を見て僕はぞっとした。

なにか巨大な爪のようなもので抉られた跡がある。古傷じゃあない、たった今つけられた様な生々しい傷だ。


「それ、どうしたんだ?」


「俺はもうだめだ、この白い方の包みを大阪にいるタタリって娘に届けてくれ」


「あきらめるんじゃない、いくら怪我しても死者は死なないカァ。しかし自分の存在を諦めたら消えてしまうぞ」


自分の存在を諦める、死んだと思い込む。それが死者の消滅らしい。


「俺はもう疲れた・・・たのむ、これがアイツの手に渡ったら・・・」


「あいつ?」


「じきにここに来るだろう、頼みの刀も折れちまった。もうこの老いぼれには走る気力もねえ」


「刀?あいつ?話が見えないよ」


「その唐草色の包みの方、そっちには刀が入ってる。タタリに渡せば直してくれるだろうが…そいつなしでこの場を乗り切る力はワシにはねえ」


手渡された唐草色の包みを軽く振ってみると、中でチャリチャリと金属の音が聞こえる。重さといい手触りといい、彼の言うように折れた刀が鞘の中で踊っているようだった。


「刀渡されるなんて物騒だな。簡便してよ」


「頼む、その白い方の包みがアイツに渡ったらえらい事に・・・あああ!!!」


男は言い切る前に悲鳴ににた叫び声を上げた。


「な、なになに!?」


男の固まった視線の先に振り返ると、そこには・・・



腰まであるザンバラ髪、真っ赤なボロボロのノースリーブのワンピースを女が立っていた。
しかし異様なほどでかい、3mはあるんじゃないだろうか?
手足が以上に細く長く、こちらをガン見している目は異常にでかく光っている。


今にも襲い掛からんばかりに長い指をワキワキと動かしている。するどい金属質な爪に血がこびりついている、これでこの老人の胸を引き裂いたのだろう。
しかし左手の手首から先がなく、血が滴っていた。


「ノロイィィ!!」


化け物は君の悪いか泣き声で老人をノロイと呼んだ。それが名前なのか、変わった名前だ。
誰につけられたか知らないが、僕はアカネさんにつけてもらってよかった。


「行け!少年!!頼む!!」


「え、いやちょっとなんだよあれ!!」


「ぃよくもワタシの手首をぉぉぉ」


手首は老人に切り落とされたのか、怒り狂って僕らは眼中にない様子だった。



「カァァーちびる、ちびってしまう!」


「俺の肩の上でちびるんじゃねえ!!」


「頼む!!死者の命運がかかっているんだ!」


老人はよろよろと立ち上がり、僕らと化け物の間に立った。


「こい、ヒキコ!九州男児の死に様見せてやるわ!」


九州生まれなんだ。とつまらない事に関心してるまもなく、老人はヒキコと呼んだ化け物に踊りかかった。




"ノロイ、すまない"



どこからか声が聞こえた。いや、聞こえたと言うよりは頭の中に響いた。

老人はこちらを見て微笑んだ。だが僕らに対してではない、その声の主にだ。


「うぉおおおおおお」


「キッシャアアアアア」


ノロイはヒキコに体当たりを食らわした。
とりあえず僕らはダッシュした、というより何かに引っ張られるようにその場を全力で離れた。


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